令和6年5月17日

千里春如錦。最も壮麗な季節を迎え、ご参拝の皆様を慎ましくおもてなし、心を癒してくれる境内の花々。

この好季に、福聚山太山寺にて御本尊十一面観世音菩薩御縁日大護摩法会併せ宗祖弘法大師の御尊影を拝して旧正御影供を厳修いたしました。

この法会は、延喜十年(910)3月21日東寺灌頂院に於いて、長者観賢僧正により始行され先師方により連綿と護り受け継がれてきた厳儀であり、承和2年、法身の里高野の霊峰に御入定なされた空海上人を憶念し、祖恩報謝の法楽を捧げる法会であります。

本年の法会では、遥か石川県穴水町の古刹勅定山来迎寺御住職 加波祐正僧正と福岡県飯塚市 観音寺御住職 高野山真言宗福岡宗務支所支所長 古賀一弘僧正に御来山賜り、大護摩祈禱会、ご法話、御詠歌布教と絶大なる御助法いただき、荘重な気に包まれた堂内での一座の法会となりました。

古賀一弘僧正様は元旦の能登半島地震発災直後から頻繁に北陸の地の被災された方々へ救援物資を届け、被災状況視察の為能登半島全域を訪れ物心共に能登に寄り添っておられます。

令和6年元旦夕刻、能登半島沖を震源とする大地震により穴水町の多くの家屋が倒壊、道路路面にも激しい凸凹。見慣れた風景は一瞬にして変り果てた。1200年の歴史を重ねた勅定山来迎寺の本堂、諸堂、山門、庫裡も甚大な被害を受けた。

過酷な現実の中でも笑顔を忘れずに、手を差し伸べ合い、希望を捨てず力強く前に進む加波祐正住職は「苦しんでいる人を一人でも多く救いたい」と将に菩薩行を常に実践されている僧正様です。

ご法話の中で加波僧正は、発災の瞬間から避難所でのテレビ等のメディアでは報じられない、また遠く離れた九州の地では窺い知ることの出来ないリアルな様子を大変お辛い心情の中克明に語っていただきました。

 私たちの住む日本。能登半島で今何が起きているのか、どんな状況なのか、現状を知っていただき私達それぞれにできる支援、そして長期的なサポートを改めましてお願い致します。先ずは心を寄り添い、受け止め、気持ちを共有して行けたらと存じます。

この勝縁に御西下賜り、共に祈りを捧げ被災された総ての人々の心に届きますことを念じて至心に合掌礼拝出来ました事、古賀僧正様、加波僧正様、職衆の皆様、そしてご参詣賜りました檀信徒各位に甚深の謝意を申し上げます。

能登半島地震を決して風化させない。

地震国である我が国日本。

叡智を集結して必ずこの困難を乗り越えることを信じています。

有難や 高野の山の 岩陰に 大師はいまだ 在しますなる